【フィリピンでの人材定着を成功させる秘訣】当社が実践する「退職者ゼロ」を実現した4つのポイント+α

2025/7/1

ES NETWORKS PHILIPPINES INC. 後藤英樹


海外拠点での事業展開において、人材の確保と定着は多くの企業が直面する大きな課題です。特に、成長著しいアジア地域では、優秀な人材の獲得競争が激化し、高い離職率に悩む声も少なくありません。

しかし、当社は、2023年7月にコアメンバーの退職が相次いだ状況から、2024年12月以降「退職者ゼロ」を達成し、さらに5名の現地スタッフ増員に成功しています。この目覚ましい成果は、一体どのようにして実現されたのでしょうか?

本記事では、当社がフィリピン拠点で実践し、「退職者ゼロ」を実現した「人材定着4つのポイント+α」について、具体的な取り組みをご紹介します。

海外事業を成功に導く「人材定着」戦略とは?

当社がフィリピンで実践する人材定着のポイントは、単なる福利厚生の拡充に留まりません。従業員のモチベーションと満足度を高める「動機づけ要因」と、不満を解消する「衛生要因」の両面からアプローチすることで、持続的な組織成長を可能にしています。

1. 徹底的な情報発信:透明性で信頼を築く組織運営

組織の方針や状況が不明瞭だと、従業員は不満を感じやすくなります。当社では、以下のような徹底した情報発信を通じて、会社とマネージャーの考え、向かう方向性を常に共有しています。

Kick-off Meeting (KOM)                       半年に1回、本社社長や海外事業責任者、現地法人マネージャーが方針を直接説明します。

Monthly Meeting                         毎月、海外事業責任者以下、原則全員が対面で参加し、営業状況や社内制度の変更に加え、事業戦略や成功事例を共有します。

Team Meeting                          隔月でチームごとに実施し、案件状況や定常業務の進捗管理を行います。

日常的なコミュニケーション                     案件の可能性や新制度に関する動きは、メールやチャットで即時共有されます。

2024年度 Kick-off Meetingの様子

2. 見える化・標準化と権限移譲 / 成長機会の提供:自律的な成長を促す環境

従業員が成長を実感できる機会が不足すると、離職につながりやすくなります。当社は、業務の「見える化」と「標準化」を進め、それを基にした「権限移譲」と「成長機会の提供」を重視しています。

①業務フローの固定化と効率的な情報共有                           お客様の状況に応じた都度対応ではなく、定常業務のフローを固定化し、共通ファイルで効率的な情報共有を実施しています。

②年次・月次業務の一覧化と定期報告                             社内業務を一覧化し、定期的な報告の場を設定することで、業務内容の透明性を高め、抜け漏れを防ぎます。

③国籍ではなく等級/役職による管理                              曖昧な分類ではなく、明確な基準で人材を管理し、スタッフ層の管理を原則オフィサー層が実施することで、権限移譲を促進しています。

④フィリピン人スタッフ主導のファシリテーション                       チームミーティングのファシリテーションを現地スタッフが主導するなど、自律的な運用に委ねています。

3. 評価制度の厳格運用と育成:貢献を正当に評価し、キャリアパスを示す

人事評価制度が形骸化していると、従業員のモチベーション低下を招きます。当社は、評価制度の「厳格」かつ「戦略的な運用」を通じて、貢献をしっかりと評価し、明確なキャリアの道筋を示しています

■制度に従ったスケジュール管理                               目標設定やフィードバックのスケジュールを厳守し、密なコミュニケーションを確保しています。

■貢献に基づく積極的な昇格                                 人件費抑制よりも貢献を重視し、積極的に昇格させることで、社内へ「若手でも昇格できる」「2年連続での昇格は十分可能」「マネジメント業務が重視されている」という明確なメッセージを発信しています。

■OJTに加えOff-JTを導入                                  実務を通じた育成だけでなく、座学によって理論的な知識も習得させ、非定常業務を目標に組み込み評価することで、多様なスキルを育成します。

強み・課題・育成方針を明確に具体化する

4. 魅力的な職場環境 / 福利厚生:日本の慣習にとらわれず、現地スタッフのニーズに対応

職場環境や福利厚生が現地スタッフのニーズと合致していない場合、不満の大きな要因となります。当社は、日本の制度に縛られず、ローカルスタッフが重視する項目に優先的に対応しています。

①WFH (在宅勤務) の継続・拡充                                コロナ禍で導入したWFHを、費用対効果を考慮し、コロナ後も継続・拡充(100%在宅も可能)しています。ただし、KOMや月次ミーティングは対面を強く推奨しています。

②重要イベントの継続実施                                  アウティングやクリスマスパーティー、クリスマス休暇など、重要度の高いイベントを継続し、現地スタッフ主導で運営しています。

③従業員の意向を聴く機会の提供と対応状況の共有                       従業員満足度調査の結果に基づき、ニーズの高い項目(ランチ代上限の見直し、民間保険適用範囲の拡大など)を検討し、導入見送りになった場合でも検討過程を共有することで、透明性を確保しています。

「+α」でより強固な組織へ:チームワークと成長の循環

上記4つのポイントに加え、当社は以下の「+α」の要素も重要視しています。これらは、特にフィリピンのような国で、組織の「動機づけ要因」を強化し、退職者ゼロを実現した重要なファクターと言えるでしょう。

PHメンバー同士の繋がり / チームワーク

  • IndependentとTeamworkを両立したメンバーの採用:フィリピン人スタッフおよび日本人による面接に加え、IQテストやパーソナリティ診断を実施し、バランスの取れた人材を選定しています。
  • 公平な評価: コミュニケーション能力の高さだけでなく、内向的なスタッフや専門家気質を持つスタッフも正当に評価しています。
  • メンバー同士が繋がれる場の提供: クリスマスパーティーやアウティング、クラブ活動(ボランティア、スポーツ等)、Company Lunch、GTKY(Get To Know You)ランチ、OSH委員会、部門横断的なプロジェクトなどを通じて、交流の機会を創出しています。

事業拡大 / 業務改革 (BPR)

  • 成長と安定の両立: ベトナム法人、フェニックスアカウンティングとの連携を通じた、案件数の増加や新しい種類の案件獲得(M&A、人材紹介、非定型業務)による事業拡大と、什器の導入(ディスプレイ、スピーカー、社用車等)、IT/DX化(会計システム、人事管理システム等)による抜本的な業務改善を両立させています。

まとめ:実践と理論の融合で貴社の海外事業を加速

当社は、これらの「人材定着4つのポイント+α」を実践することで、フィリピン拠点で「退職者ゼロ」という状態を継続中であり、この成功体験は、机上の空論ではない、現場で培われた実践的なノウハウに基づいています。

当社では、現地法人設立から、会計、税務、労務、法務、M&A、PMI(経営統合支援)まで、ワンストップで対応可能な体制を構築しており、豊富な経験と実績を持っています。

フィリピンをはじめとする海外での事業展開において、人材定着、組織課題、人事制度設計、M&A、または業務効率化などでお困りでしたら、ぜひ当社にご相談ください。実践的な知見と専門性を兼ね備えたプロフェッショナルが、貴社の海外事業の成長と成功を強力に支援いたします。

まずはお気軽にお問い合わせください。貴社の課題に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。

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