ベトナムの外資規制を分かりやすく解説!出資比率や事業分野別の規制について

近年、東南アジアの中でも高い経済成長を続けるベトナムは、多くの外国企業にとって魅力的な投資先となっています。しかし、ベトナムには外国資本の参入に関する「外資規制」が存在しているため、進出前に規制の内容を把握することが重要です。

この記事では、ベトナムの外資規制について、出資比率に関するルールや、事業分野ごとに異なる規制を分かりやすく解説します。


ベトナム進出を検討している方は、ぜひ参考にしてください。


ベトナムの外資規制の基本【2025年最新】





ベトナムでは、外国企業の参入を促進する一方で、国家の安全や公共の利益を守るために、外資企業に対する一定の規制を設けています。
この規制は「外資規制」と呼ばれ、投資可能な事業分野や出資比率、土地の取得条件、資本金要件など多岐にわたります。
外資規制の背景には、自国産業の保護、雇用確保、国家主権の維持といった政策的な理由があり、ベトナム政府はWTO加盟後も特定の分野においては制限を継続しています。

そのため、ベトナム進出を検討する際には、外資規制をしっかりと理解することが重要です。


経営投資禁止分野がある

ベトナムでは、国家の安全保障や社会秩序を守る観点から、外国企業による投資が法律で禁止されている分野があります。
以下は、外資系企業が参入できない主な事業分野です。

  • 麻薬関連の事業(製造・流通・研究など)
  • 各種化学物質、鉱物に関する事業
  • 各種野生植物、動物の標本に関する事業
  • 絶滅のおそれのある希少な野生動植物、水産物の標本に関する事業
  • 売春事業
  • 人身売買や臓器売買に関する活動
  • 武器・弾薬・軍需品の製造・取引
  • 特定の国家機密や安全保障に関わる分野  など

 これらは禁止業種※1に該当するため、外資は一切の参入が認められていません。
ベトナム投資法(2020年施行)※2で明確に列挙されており、違反すると法的責任を問われるため、事前確認が必要です。


条件付経営投資分野がある

ベトナムには「条件付経営投資分野(Conditional Business Lines)」※1と呼ばれる、外資の参入に一定の制限や条件が設けられている事業分野があります。
 
 以下は代表的な分野です。
※3

  • 小売・卸売業(現地パートナーとの合弁が必要な場合あり)
  • 教育サービス(ベトナム人学生対象の場合は制限あり)
  • 電力供給事業
  • 医療サービス・病院経営
  • 放送・報道・出版
  • 輸送・物流(特に陸運・内航海運)

 これらの分野では、外資100%での参入が認められていないか、あるいはライセンス取得、政府認可、現地法人との合弁設立などが求められます。
 ベトナムのWTO加盟により段階的な自由化は進んでいるものの、現時点では要件を満たす必要があるため、注意しておきましょう。

 

出資比率の制限がある

ベトナムでは業種ごとに、外国資本が持てる出資比率の上限が定められている場合があります。
以下は、主な業種とその上限比率の例です(2025年時点)※4

 業種

 外資の出資比率上限

 銀行業

 上限30%(一部49%)

 通信(インフラを伴う)

 49%

 通信(サービスのみ)

 最大65%

 航空輸送(旅客)

 34%

 輸送・物流業(陸運)

 49%(一部70%)

 広告業

 合弁のみ、上限なしだが政府承認必要

 不動産仲介業

 外資100%可(条件あり)

 これらの上限は、ベトナムの投資法および専門省庁のガイドラインに基づいて設定されており、変更される可能性もあるため、最新の法令確認が必要です。

土地所有は認められていない

ベトナムでは、外国企業だけでなく、ベトナム人であっても土地を「所有」することは原則として認められていません。※1
憲法によりすべての土地は国家の所有物とされており、民間(国内外問わず)は土地使用権(LUR:Land Use Right)を得ることで、事実上の土地利用が可能になります。

外資系企業は以下の方法で土地使用権を取得できます。

  • 工業団地などの国有地をリース契約で借りる
  • ベトナム法人との合弁会社を通じて土地を利用する

 リース期間は最大50年(特例で70年)までで、延長には再申請が必要です。
建物(構造物)については所有可能ですが、土地そのものの所有はできません。


法定資本比率が定められている

ベトナムでは、一部の業種において、事業開始時に最低限必要な法定資本金(Minimum Legal Capital)が定められています。
これは、企業の信用維持や健全な運営を目的とした規制であり、投資分野によって金額が異なります。

JETROの情報によると、以下のような業種が該当します。※5

 業種・分野

 法定資本金

 教育サービス

 30million VND

 職業教育センター(Vocational Education Center)

 5billion VND

 中等職業学校(Vocational Intermediate School)

 50billion VND

 職業大学(Vocational College)

 100billion VND

 投資顧問業(証券投資助言)

 10 billion VND

 銀行業(ベトナムでの子会社設立)

 3,000 billion VND

 保険業(生命・損害)

 600~1,000 billion VND

 上記のように、ベトナムでは外資が比較的自由に参入できる分野が広がっていますが、「非規制=無条件で即ビジネス可能」というわけではありません。
そのため、営業ライセンスや労務、税制などの手続きも踏まえて、事前の調査と専門家との連携が重要です。

ご希望であれば、より詳細な進出手続きや現地法人設立の流れについてもご案内できます。

 

ベトナムで外資規制される主な業種・分野一覧


 

ベトナムでは、特定の業種に対して外国企業の参入に制限や条件が設けられています。
これは、国の経済主権や公共利益を保護するための措置であり、事前に規制内容を理解しておくことが事業成功の鍵です。
ここでは、外資規制される業種について、銀行業、保険業、不動産業、建設業、運送業の5つに分けて解説します。※6

 

銀行業

ベトナムでは、銀行業への外資参入に厳格な規制が設けられています。 

  • 外国銀行支店としての進出は可能(ベトナム国家銀行(SBV)の認可が必要)
  • 商業銀行への出資比率は外資1社あたり最大30%まで(特例あり)
  • 外資100%の銀行設立は原則不可
  • 原則、既存ベトナム金融機関との連携が前提

 

保険業

保険業も金融分野に含まれ、外資参入にはさまざまな条件が伴います。 

  • 外資100%での保険会社設立は可能(審査あり)
  • 保険代理・仲介業は合弁が推奨される場合も
  • 再保険業は資本要件・経営能力の審査あり
  • AIA・Prudentialなど大手が進出済み(新規参入には行政対応力が求められる)

 

不動産業

不動産業は外資の参入が進んでいますが、土地所有は認められていません。 

  • 土地は所有できず、使用権(LUR)をリース契約で取得
  • 住宅・商業施設の開発や運営は可能(要政府承認)
  • 不動産仲介・管理業は100%外資可(法定資本条件あり)
  • 外国人による住宅購入には上限あり(集合住宅の30%までなど)

 

建設業

建設業は開放的に見えますが、インフラ系事業には制限があります。 

  • 建設会社は100%外資で設立可能
  • 公共インフラ事業は合弁が求められることも
  • 専門技術者の雇用・技術移転が条件となる場合あり
  • ライセンス区分(設計/施工/監理)ごとに審査基準あり
  • 国家的インフラ事業では現地企業との連携が一般的

 

ベトナムで外資規制がない分野はある?

ベトナムでは、一部の業種・分野において外資100%出資の現地法人設立が認められており、出資比率の制限や合弁要件が課されない「非規制分野」とされています。

特に製造業やIT、コンサルティングなどは、比較的参入しやすく、ベトナム政府も外資誘致に積極的です。※7

以下は外資規制が緩い、またはないとされる主な分野とその概要です。

分野名

内容例

外資の出資制限

備考・注意点

製造業

電子機器、金属加工、食品加工、自動車部品など

なし(外資100%可)

工業団地での設立が一般的
環境規制に留意

IT・ソフトウェア開発

アプリ開発、システム構築、クラウドサービスなど

なし(外資100%可)

ベトナム政府も積極支援している成長分野

コンサルティング業

経営、財務、人材、IT、マーケティング等

なし(外資100%可)

一部の分野で国家資格が必要なケースあり(例:会計・法律)

デザイン・クリエイティブ

グラフィックデザイン、広告制作、映像編集など

なし(外資100%可)

広告業務の一部はライセンス制、留意が必要

一部の卸売・小売業

日用品、衣料、食品などの販売

原則なし※

品目・拠点数により一部条件付き(小売ライセンスが必要な場合あり)

※「出資制限なし」は、ベトナム投資法上、事前の出資比率制限や政府の特別許可を必要としない分野を指します。ただし、営業許可や個別ライセンスが別途必要になる場合があります。

 

製造業

製造業は、外資にとって最も進出しやすい分野の一つで、電子部品、自動車部品、食品加工、縫製業など多岐にわたります。
ベトナムはWTO加盟以降、多くの製造業分野を外資に開放しており、出資比率の制限もありません。
特に工業団地(Industrial Park)内での設立が一般的であり、土地使用権の取得や税制優遇措置も受けやすい点が魅力です。
一方で、化学製品や金属加工など一部の製造分野では環境保護規制が厳格に運用されているため、事業計画段階から環境影響評価(EIA)への対応が必要になります。

 

IT・ソフトウェア開発

IT分野はベトナム政府が特に力を入れて支援しており、外資系企業の100%の出資が可能です。
アプリケーション開発、クラウドサービス、オフショア開発センター(ODC)、人工知能(AI)など、幅広い領域が対象となります。
特にホーチミン市やハノイ市、ダナン市にはIT特化型のハイテクパークが整備されており、法人設立がしやすい環境が整っています。
また、法人所得税の免除・減免などのインセンティブ制度も多く、外資系スタートアップにも注目されています。

 

コンサルティング業

経営・人材・マーケティング・IT戦略などの分野におけるコンサルティング業務は、外資100%での参入が可能です。
ベトナム市場の開放や企業のグローバル化により、コンサルティングのニーズは年々高まっています。
ただし、会計・税務・法律といった一部の専門業務では、ベトナム国家の資格保持者が必要であったり、または現地法人との合弁が求められる場合があります。
外資企業が進出する場合は、業務範囲と規制の境界線を事前に確認しましょう。


デザイン・クリエイティブ業

グラフィックデザイン、広告制作、映像編集、ウェブ制作などのクリエイティブ関連業種は、基本的に外資100%での参入が可能です。
特にデジタルマーケティングやSNS向けの動画コンテンツ制作などは、需要が急拡大しています。

ただし、広告業の一部(テレビ・新聞・屋外広告など)については、ライセンス制や規制があり、内容の審査や政府許可が必要になることがあります。
ベトナムの文化・宗教・政治に配慮した表現が求められるため、現地の広告法に関する知識も重要です。


卸売・小売業(一部を除く)

ベトナムではWTO加盟以降、小売・卸売分野も段階的に開放されてきました。
日用品、衣料品、食品などの分野では、原則として外資100%の出資が可能です。
ただし、以下の点に留意が必要です。

  • 小売ライセンス(ERC・IRCとは別)の取得が必須
  • 店舗数が増える場合は「経済的ニーズテスト(ENT)」の対象となり、追加許可が必要になるケースもあり
  • 酒類・医薬品・ガソリンなど特定商品の販売は、依然として合弁または許可制

 このように、卸売・小売業は出資比率の面では自由度が高いものの、営業の実務においては行政手続きが多いため、慎重な準備が必要です。

 

運送業

ロジスティクスを含む運送業は、形態別に出資制限が異なります。 

  • 陸上輸送・内航海運:外資出資比率49%まで(合弁前提)
  • 国際貨物輸送:外資100%可能(政府認可が必要な場合あり)
  • 倉庫業・サプライチェーン:外資100%可(土地取得には注意)
  • DHL・FedExなど外資大手が多数進出(パートナー選定・業務範囲に戦略性が必要)

 

ベトナムの外資規制は「エスコンサルティング」にご相談ください

ベトナムへの進出を検討する際は、外資規制の内容を正しく把握しておくことが重要です。
業種・分野によって出資比率やライセンス取得要件、資本金の最低額などが大きく異なり、事前準備を誤ると事業開始に遅れやトラブルが生じるおそれもあります。

エスコンサルティングでは、ベトナム投資に精通した専門家が最新の法規制や申請手続きに基づいて、貴社の事業内容に応じた最適な進出スキームをご提案いたします。
初めての海外展開から、すでに法人設立済みの企業の業種追加・再編まで、丁寧にサポートいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

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 ※1:ジェトロ「外資に関する規制
 ※2:国際協力機構(JICA)「
ベトナム2020 年投資法 」
 ※3: ジェトロ「
条件付き経営投資分野、業種の目録
 ※4: ジェトロ「
外資系企業に対する出資比率の制限
 ※5:ジェトロ「
法定資本が必要となる投資分野
 ※6:ジェトロ「
各事業分野での規制
 ※7:ジェトロ「
外資に関する奨励

 



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