ベトナム進出初期に採用すべき「ベトナム人バックオフィス人材」 とは? ~ベトナム進出支援を行う 会計・税務コンサルの視点から~

ベトナム進出初期に採用すべきベトナム人バックオフィス人材の条件を、会計・税務・労務の実務視点から解説。ベトナム法人設立後の手続き、銀行対応、VATインボイス管理など、進出初期に確認すべきポイントを紹介します。
ベトナム進出の方法を検討し、現地法人設立の手続きを進める中で、多くの日系企業が悩まれるのが、「最初にどのような現地スタッフを採用すべきか」という点です。
特にベトナム法人設立直後は、営業活動や事業立ち上げだけでなく、総務、労務、銀行対応、会計や税務申告に必要な資料の管理など、バックオフィス全体を横断的に対応できる現地人材が必要になります。
当社では、これまで累計900社以上のベトナム進出企業様をご支援してきました。その中で、進出初期の混乱や税務トラブルの多くは、「現地実務を理解し、関係者との連絡窓口になれる現地人材がいないこと」に起因していると感じています。
本記事では、ベトナム進出支援を行う会計・税務コンサルティングの立場から、ベトナム進出初期に採用すべき現地バックオフィス人材の条件と、面接時の見極め方について解説します。
1. ベトナム進出初期に重視すべき3つの実務能力
1-1.コミュニケーション能力
語学力よりも「報告・共有・確認」が重要

ベトナム進出初期は、日本本社、駐在員、会計事務所、銀行など、複数の関係者とのやり取りが発生します。
そのため、採用時には「日本語や英語が流暢に話せるか」だけで判断するのではなく、以下のような実務上のコミュニケーション能力を確認することが重要です。
- 必要事項を正確に伝えられるか
- 分からないことを放置せず、早めに確認できるか
- 問題が発生した際に、速やかに共有できるか
特に「問題そのもの」よりも「報告が遅れること」が業務上のストレスとなることがあります。そのため、語学力だけでなく、報告・連絡・相談の姿勢を確認することが非常に重要です。
面接質問例
- 「日本人または外国人と一緒に仕事をした経験について教えてください』
- 「業務上のコミュニケーションで気を付けていることはありますか」
確認したいポイント
- 具体的な業務経験を説明できるか
- 不明点を放置しない姿勢があるか
- 問題発生時に早めに共有できるタイプか
1-2. 銀行送金業務への理解
出資金・親子ローン・海外送金では実務対応力が必要
ベトナムでは、海外送金や外貨取引に関する銀行実務が厳格に運用されています。
例えば、以下のような取引では、銀行から契約書、インボイスなどの証憑の提出を求められることが多く、対応を誤ると、送金の遅延や組戻しが発生する可能性があります。
- 出資金の受領
- 親会社からの借入金、親子ローン
- 立替金や精算金の支払い
そのため、ベトナム進出初期に採用する現地バックオフィス人材には、単なる銀行システムへの入力作業ではなく、「必要資料を確認しながら進める実務感覚」が求められます。
面接質問例
- 「海外送金を行う際、どのような資料を確認していましたか」
- 「銀行送金の実務フローを説明してください」
確認したいポイント
- 契約書やインボイスを確認する意識があるか
- 銀行送金の承認フローを理解しているか
- 非日常的な送金について、銀行へ事前確認する習慣があるか
1-3. VATインボイスの発行・管理経験
ベトナム法人設立後の税務リスクを防ぐ重要業務
ベトナムでは、VATインボイスの発行および管理が非常に重要です。
VATインボイスに誤りや管理不備がある場合、以下のようなリスクにつながる可能性があります。
- 法人税上の損金不算入
- VAT控除の否認
- 行政罰
特にベトナム進出初期は、営業担当者や日本本社側がベトナムのVATインボイス制度に慣れていないケースも多いため、現地スタッフが日常的にインボイスの発行・保管・確認を行えるかどうかが重要になります。
面接質問例
- 「VATインボイスの発行・管理の流れを説明してください」
- 「売上インボイスと仕入インボイスをどのように管理していましたか」
確認したいポイント
- VATインボイスの発行実務を理解しているか
- 売上・仕入インボイスの管理経験があるか
- PDF・XMLデータ保管の重要性を理解しているか
2. さらにあると望ましい実務経験
2-1. 外部会計事務所とのやり取り経験
ベトナム法人設立後、進出初期の会計・税務業務を外部の会計事務所へ委託する企業は少なくありません。
しかし、社内側に窓口となるスタッフがいない場合、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 会計資料の提出遅延
- 当事者間の認識相違
- 税務申告の遅れ
そのため、外部会計事務所とやり取りした経験がある人材は、ベトナム進出初期のバックオフィス体制構築において非常に有用です。
特に、以下のような対応ができる人材が望ましいといえます。
- 必要資料を整理できる
- 不明点を会計事務所へ確認できる
- 確認した内容を整理して社内に説明できる
面接質問例
- 「会計事務所と勤務先との間で、どのような役割を果たしていましたか」
- 「月次会計資料として、どのような資料を提出していましたか」
2-2. 社会保険・労務手続きへの理解
ベトナムでは、入退社時の社会保険手続き、労働契約の管理など、労務関連の手続きも重要です。
手続きの遅れや登録不備がある場合、従業員とのトラブルや行政対応につながる可能性があります。
進出初期はまだ人員数が少ないため、専任の人事・労務担当者を置かず、バックオフィス担当者が総務・労務も兼任するケースが多く見られます。そのため、基本的な社会保険・労務手続きへの理解がある人材であれば、立ち上げ後の実務がスムーズになります。
面接質問例
- 「入社時・退社時の社会保険手続きについて説明してください」
- 「労働契約書の管理経験はありますか」
確認したいポイント
- 入退社時の基本フローを理解しているか
- 労働契約管理の経験があるか
- 社会保険手続きの実務経験があるか
2-3. 税務申告の基礎的な理解
現地バックオフィス人材に、詳細な税務申告書の作成まで求める必要はありません。
しかし、ベトナム法人設立後の実務では、主要税目の概要を理解している人材であれば、実務コミュニケーションが非常にスムーズになります。
特に外国契約者税、VATインボイス実務など、日本にはないベトナム特有の税務について基本的な理解があると望ましいです。
面接質問例
- 「外国契約者税(FCT)とはどのような税金ですか」
- 「VAT申告はどのように行われますか」
3. 面接では「実務フロー」を説明してもらうことが重要
ベトナム人バックオフィス人材を採用する際には、候補者の 「経験があります」「対応できます」という回答だけで判断しないことが重要です。
実務経験がある人材であれば、必要資料、承認フロー、関係者とのやり取り、発生しやすいトラブルまで、具体的に説明できる傾向があります。
面接では、必ず以下のように、実際の業務フローを具体的に説明してもらうことをおすすめします。
- どのような資料を確認していたか
- どのような承認フローを経ていたか
- 関係者とどのようにやり取りしていたか
- 問題が起きた場合、どのように解決していたか
一方で、実際には経験が浅い場合、回答が抽象的になりやすく、具体的な業務手順や注意点を説明できないことがあります。
まとめ
ベトナム進出初期では、必ずしも最初から給与水準の高い専門人材を採用する必要があるとは限りません。
しかし、以下のような人材を早い段階で確保できるかどうかは、進出後の安定運営に大きく影響します。
- バックオフィス実務を理解している
- 銀行、会計事務所、行政機関とやり取りできる
- 問題を社内で早めに共有できる
特に、会計・税務・銀行実務は、日本とベトナムで運用が大きく異なる部分が多く、ベトナム法人設立後に適切な人材を採用できるかどうかが、その後の管理体制を左右するケースも少なくありません。
また、日々の会計税務業務を進める中で、日本人ご担当者様と現地スタッフ様との間で認識や運営にズレが生じることもあります。そのような場合には、必要に応じて現地の会計・税務コンサルが間に入り、第三者の専門的な観点から、円滑なコミュニケーションと実務運営をサポートすることも可能です。
当社では、ベトナム進出支援、ベトナム法人設立手続き、会計・税務・労務のワンストップ対応、ベトナムM&Aに関するコンサルティング支援まで、日系企業のベトナム事業を幅広くサポートしています。
ベトナム進出時の会計税務体制、現地バックオフィス人材の採用、法人設立後の管理体制についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する専門的な助言を意図したものではありません。本記事の内容に基づいて行われた対応の結果について、当社は責任を負いかねます。実際の手続や意思決定を行う際は、必ず最新の法令をご確認のうえで専門家へご相談ください。
