ベトナムの労働許可証(ワークパーミット)の取得方法をわかりやすく解説
ベトナムで外国人が就労するためには、労働許可証(ワークパーミット)を取得することが法律で義務付けられています。
労働許可証を取得せずに働いた場合、本人だけでなく雇用主にも罰則が科されるため、正しい手続きを理解しておくことが重要です。
この記事では、ベトナムの労働許可証の申請条件や必要書類、申請の流れなど、取得方法についてわかりやすく解説します。
労働許可証(ワークパーミット)と就労ビザ(LDビザ)の違い
「労働許可証(ワークパーミット)」と「就労ビザ(LDビザ)」は、どちらも外国人がベトナムで働くために必要なものです。
しかし、労働許可証は「働くための許可証」であり、就労ビザは「ベトナムへ入国するための証明書」である点が大きく異なります。
まずは、混同されやすいベトナム労働許可証と就労ビザの違いを見ていきましょう。
| 労働許可証(ワークパーミット) | 就労ビザ(LDビザ) |
目的 | 外国人がベトナムで働くことを認める許可証 | 就労目的でベトナムへ入国するための証明書 |
主な役割 | 就労の許可 | 入国の許可 |
発給機関 | 市・省の内務局 | 出入国管理局などの管轄機関 |
対象 | ベトナムで働くすべての外国人(免除者を除く) | 労働許可証を保有する外国人 |
有効期間 | 最長2年(更新可能) | 法令上は3ヶ月〜2年(種類により異なる) |
申請条件 | ・18歳以上 ・健康状態が良好 ・犯罪歴がない ・管理者、業務執行者、専門家、技術者のいずれかに該当する | ・労働許可証(ワークパーミット)を取得していること |
発給までにかかる期間 | 新規申請:約5営業日 再取得:約3営業日 | 最短1日 |
労働許可証とは
労働許可証(ワークパーミット)とは、外国人がベトナム国内で合法的に就労するために必要な許可証です。
ベトナムでは、18歳以上で健康状態が良好、かつ犯罪歴がないことを前提に、管理者・業務執行者・専門家・技術者が対象となります。
申請は勤務先の所在地を管轄する内務局で行い、発給まで通常10営業日前後かかります。
労働許可証の有効期間は、最長2年です。
また、ベトナム政府は一部の外国人を対象に労働許可証免除制度を設けています。
免除を受ける場合も「労働許可証免除申請書」を申請し、正式に承認を得ることが必要です。
就労ビザ(LDビザ)とは
就労ビザ(LDビザ)は、外国人がベトナムに入国し、就労を伴う活動を行う際に必要なビザです。
ビザの発給には、事前に労働許可証の取得が必須であり、労働許可証が発給された後に出入国管理局を通じて申請します。就労ビザの発給までの期間は比較的短く、最短1日で完了するケースもあります。
就労ビザは有効期間3ヶ月から2年のものを発給可能と法令上規定されていますが、実務上は1年超のものは発行されません。そのため、ベトナムに滞在して就労する場合には、就労ビザではなく、下で説明する一時滞在許可証(レジデンスカード)を労働許可証(ワークパーミット)と併せて取得することが一般的です。
労働許可証(ワークパーミット)の申請条件

労働許可証の申請には、職務内容やポジションに応じた条件が定められており、「管理者」「業務執行者」「専門家」「技術者」の4つの区分に分かれています。
種類 | 対象者 |
管理者 | 企業法の規定に基づき企業を管理する者、または機関・組織の長、あるいはその副長 |
業務執行者 | 以下のいずれかに該当する者 ・企業の支店、駐在員事務所、または事業所の長 ・機関、組織、または企業の少なくとも1つの分野を直接管理し、機関・組織・企業の長の直接の指示・管理に服する者 |
専門家 | 以下のいずれかに該当する者 ・学士以上の学位または、勤務予定の業務に適合する2年以上の職務経験を有する者(優先分野の場合1年も可) |
技術者 | 以下のいずれかに該当する者 ・1年以上の専門教育を受けかつ勤務予定の業務に適合する2年以上の実務経験を有する者又は勤務予定の業務に適合する3年以上の実務経験を有する者 |
いずれの職種も、学歴や実務経験など、一定の要件を満たすことが求められます。
労働許可証の審査では、職務内容と資格・経歴が一致しているかどうかが重視されるため、職務証明書や在職証明書などに明確に記載しましょう。
労働許可証(ワークパーミット)の申請に必要な書類

ベトナムで労働許可証(ワークパーミット)を取得するには、職種や雇用形態に応じて多くの書類を準備する必要があります。
書類の一部は日本で取得し、ベトナム語への翻訳と公証・領事認証を受ける必要があるため、余裕をもって準備を進めることが大切です。
以下は、労働許可証の申請に際して、一般的に求められる書類の一覧です。
・労働許可書申請書
・健康診断書
・投資登録証明書・企業登録証明書、または駐在員事務所の設立許可書
・顔写真(4x6cm)2 枚
・パスポート
・犯罪経歴証明書/無犯罪証明書
・管理者/業務執行者/専門家/技術者の証明書
・任命状(社内異動)、労働契約書(現地採用)
・外国人労働者の雇用許可の承認証明書
健康診断書は発行から12ヶ月以内のものが有効で、ベトナム国内の指定医療機関で取得します。
犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)は、赴任前に滞在していた国またはベトナムのものを提出します。
また、管理職・業務執行者・専門家・技術者として申請する場合、それぞれの立場を証明するために職務経歴書や在職証明書、学位証明書が必要です。
日本語で作成されている場合は翻訳・公証が必要となります。
書類の不備や期限切れは申請却下の主な原因となるため、提出前に発行日・翻訳日・公証有効期限を確認しておくことが重要です。
ベトナムで就労する際の手続きの流れ

ベトナムで外国人が就労する場合、労働許可証(ワークパーミット)の申請は企業(雇用主)を通じて行うのが原則です。
個人での申請はできず、受け入れ企業が申請を行います。
手続きの全体像を理解しておくことで、審査の遅れや不備を防ぐことができるでしょう。
ベトナム商用ビザ(DN)を取得する
外国人本人は、ベトナムへ入国するための商用ビザ(DNビザ)を取得します。
※2025年10月現在、当該ビザ発行が停止されているためe-VISAで代替されています。
短期ビザで入国後に、現地での書類提出や健康診断、面接対応を行います。
オンラインで労働許可申請を行う
必要書類が揃ったら、企業はオンライン申請システムから労働許可申請を行います。
審査結果を待つ
書類が受理されると、担当部署が内容を審査します。
ベトナムで労働許可証が発給されるまでの期間は法令上申請から10営業日、不承認の場合は3営業日以内に理由を通知するとされています。
企業側の対応が遅れると、申請全体が長期化するため注意しましょう。
結果を取得する際に市・省の内務局に申請書原本を提出する
オンラインで承認が下りた後、申請書原本書類を内務局に提出して、正式な労働許可証を受け取ります。
許可証には有効期限(最長2年)が明記され、期限満了の45日前から更新申請が可能です。
労働許可証(ワークパーミット)取得後、レジデンスカードを申請する

労働許可証(ワークパーミット)を取得した外国人は、ベトナムに一時滞在するための一時滞在許可証(レジデンスカード)を申請することができます。
通常、レジデンスカードの有効期間は最長2年で、労働許可証の有効期限と連動します。
ベトナム国内での銀行口座開設に通常必要となり、特にベトナム居住者となる企業の法定代表者は必ず取得しておく必要があります。
レジデンスカードとは
レジデンスカードとは、外国人がベトナムに一時的に滞在することを許可する証明書で、出入国管理局によって発行されます。
対象となるのは、すでに労働許可証を取得し、ベトナム企業や組織に正式に雇用されている外国人です。
レジデンスカードは、失効直前に更新手続きを行えば、新たな労働許可証の有効期限に合わせて延長することができます。
また、配偶者や子供も「家族用レジデンスカード(TTビザ)」を申請でき、家族での長期滞在が可能です。
レジデンスカードの申請方法
レジデンスカードの申請は、企業(雇用主)を通じて出入国管理局に提出します。
申請時に必要な主な書類は以下のとおりです。
・パスポート(原本)
・レジデンスカード発給申請書
・公証済みの労働許可書の公証版
・顔写真(2x3cm)2 枚
・ベトナムでの滞在住所証明書(賃貸契約書、住居登録書など)
・公証済みの戸籍謄本(家族帯同の場合)
・企業の登記証明書・納税証明書・印鑑 など
レジデンスカードは、通常、申請後5〜7営業日程度で発行されます。
審査中に出入国を予定している場合は、事前に担当局に相談しましょう。
労働許可証が失効すれば、レジデンスカードも無効になります。
そのため、両方の期限を常に確認し、更新を忘れないことが重要です。
ベトナム労働許可証(ワークパーミット)・レジデンスカードの申請は「エスコンサルティング」にご相談ください
ベトナムでの労働許可証(ワークパーミット)やレジデンスカードの申請は、書類準備や翻訳、公証、各省庁への提出など複雑な手続きが必要です。
エスコンサルティングでは、ベトナムでの豊富な実務経験を持つ専門スタッフが、労働許可証の新規取得・更新・免除申請から、レジデンスカードの発行までワンストップでサポートします。
現地当局とのやり取りや書類不備への対応も代行するため、スムーズな手続きを実現できます。
最新の法令改正情報に基づき、最適な申請方法とスケジュール管理をお手伝いしますので、日系企業の駐在員や現地採用の方、家族帯同での長期滞在を予定している方も、安心してご相談ください。
本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する専門的な助言を意図したものではありません。本記事の内容に基づいて行われた対応の結果について、当社は責任を負いかねます。実際の手続や意思決定を行う際は、必ず最新の法令をご確認のうえで専門家へご相談ください。
