【2026年最新】フィリピンにおける税務調査(BIR)の現状と日系企業が取るべき対策

フィリピンで事業を展開する日系企業にとって、フィリピン内国歳入庁(BIR)による税務調査への対応は、避けて通れない重要な経営課題です。

直近の動向として、2025年末にはBIRより「税務調査の一時停止措置(RMC No. 107-2025 / 109-2025)」が発表され、一部の調査が停止されるなど、運用面での動きがありました。しかし、VAT等の税金還付や時効が迫っている案件、事業閉鎖に伴う調査などは例外として継続されており、決して「税務リスクがなくなった」わけではありません。

本記事では、2026年最新のフィリピン税務調査の基本プロセスから日系企業が陥りやすいトラブル事例、そして税務調査リスクを最小化するための対策について、専門家の視点から詳しく解説します。

1. 税務調査の対象になりやすい企業の特徴

BIRは独自の基準で調査対象企業を選定していますが、特に以下の特徴を持つ企業は調査のターゲットになりやすい傾向があります。

  • 長期間にわたり赤字を計上している企業: ビジネスとして成立しているか、親会社からの不当な利益移転がないか疑われやすくなります。
  • VAT(付加価値税)の還付申告を行っている企業: フィリピンでは、VATの還付申請を行うとほぼ100%の確率で厳格な税務調査が入ります。
  • 申告内容の修正や遅延が頻発している企業: コンプライアンス意識が低いとみなされ、調査の優先順位が上がる要因となります。

2. 税務調査の一般的なプロセス

フィリピンの税務調査は、法的な手続きに則って厳格なタイムラインで進行します。各段階での対応期限を過ぎると、反論の機会を失いペナルティが確定してしまうため、初動の速さと期限管理がとても重要になります。

以下は、LOA(調査通知書)の受領から、抗弁を経て、最終的なBIR長官や裁判所への提訴に至るまでのプロセスと、主要な対応期限をまとめたものです。

① LOA(Letter of Authority:調査通知書)の受領

BIRから公式な調査開始の通知が届きます。LOAの提示後、企業は指定された期限内(通常は受領後すぐ)に要求された会計帳簿や証拠書類を提出する必要があります。

② NOD(Notice of Discrepancy:差異通知)

提出書類の監査後、BIRの調査官からの初期的な指摘事項が提示され、見解の相違について協議が行われます。

③ PAN(Preliminary Assessment Notice:予備的評価通知)

協議で合意に至らなかった場合、書面で予備的な追徴税額が通知されます。企業側は受領から15日以内に異議申し立てを行う必要があります。

④ FAN(Final Assessment Notice:最終評価通知)

最終的な追徴課税の通知です。これに対しては、受領から30日以内に抗弁書(Protest Letter)を提出しなければ、税額が確定してしまいます。

⑤ 抗弁書の提出:再確認(Reconsideration)または再調査(Reinvestigation)の選択

FANに対する抗弁では、既存の書類に基づく「再確認」か、新証拠を提出する「再調査」のいずれかを選択します。「再調査」の場合は抗弁書提出後60日以内に追加資料の提出が必要となります。

⑥ FDDA(Final Decision on Disputed Assessment:最終決定通知)の受領

提出した抗弁に対するBIRの最終決定が下されます。

⑦ BIR長官への不服申し立て、または税務裁判所(CTA)への提訴

FDDAに不服がある場合、企業側は30日以内にBIR長官への上訴、または税務裁判所(CTA)への提訴を行う必要があります。

※ 税務裁判にまで発展すると、解決までに数年単位の膨大な時間とコストがかかります。そのため、PANやFANの段階、可能であればNODの段階で専門家を交えてBIRと粘り強く交渉し、早期妥結を目指すことが日系企業にとっての最適解となります。

3. 日系企業が陥りやすい指摘事項・トラブル事例

現地法人を運営する日系企業において、税務調査で指摘を受けやすい代表的な項目は以下の3点です。日々の業務における細かなミスが、大きな追徴課税につながるケースが後を絶ちません。

  • EWT(拡大源泉徴収税)の徴収・納付漏れ

    フィリピン特有の税制であり、サービスの支払いや賃料など、多岐にわたる取引で源泉徴収が義務付けられています。対象範囲の認識不足による漏れが非常に多く見られます。
  • VATの証拠書類(要件不備)

    仕入税額控除を受けるための要件が極めて厳格です。公式領収書(Official Receipt)やインボイスにTIN(納税者番号)や社名が1文字でも間違って記載されていると、控除が否認されるケースがあります。
  • 移転価格税制(Transfer Pricing)に関する文書化不足

    日本の親会社との取引において、独立企業間価格で取引が行われているかを証明する「移転価格文書」の不備を指摘されるケースが増加しています。関連者間取引の申告書(BIR Form 1709)の提出義務を見落とすと、多額の追徴課税リスクに直結します。

4. 税務調査リスクを最小化するための事前対策

税務調査による想定外のペナルティを防ぐためには、調査が入る前の「平時の対策」が何よりも重要です。調査が一時停止・緩和されているタイミングこそ、社内体制を見直す絶好の機会と言えます。

  • 日々の正確な帳簿管理と証憑の保存: 請求書や領収書の要件を満たしているか、経理担当者への指導・監査を定期的に行います。
  • 税務ヘルスチェック(模擬税務調査)の実施: BIRの目線で自社の潜在的な税務リスクを洗い出し、事前に対策を講じます。
  • 専門家との連携体制の構築: LOAを受領した際、自社だけで対応しようとすると、フィリピン特有の税務ルールの解釈でBIR担当官とトラブルになることが少なくありません。

5. フィリピンでの税務対応は専門家へご相談を

フィリピンの税務ルールは頻繁にアップデートが行われ、BIRの担当官によって法令の解釈や対応が異なることも珍しくありません。税務調査に対して場当たり的な対応をしてしまうと、本来払う必要のない多額のペナルティを科されるリスクがあります。

正確な税務コンプライアンスの維持といざという時の迅速な対応能力こそが、フィリピン事業を成功に導く鍵となります。


弊社では、日系企業のフィリピン進出支援から現地の複雑な会計・税務業務、移転価格対応を含む国際税務コンサルティングまで、豊富な実績を持つ専門家がトータルサポートを提供しております。税務調査への不安や、社内体制の構築についてお悩みの際は、ぜひお気軽に弊社までご相談ください。


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