※サービス輸出の例
フィリピン国外本社向けに、フィリピン子会社がBPO業務を提供し、対価が外貨で送金されるケース。 要件を満たせば、サービス輸出として0%の対象になり得ます。 ただし、契約書・送金証明・インボイス表示の整合が重要です。
0%と免税の違いについて
重要な論点です。言葉は似ていますが、損益への影響が異なります。
0%と免税の違い
どちらも売上にVATを上乗せしないように見えますが、仕入VATの扱いが異なります。
- 税率0%で課税される取引
- 仕入VAT控除:できる(要件あり)
- VAT還付:できる可能性あり
- インボイス表示:Zero-Rated sale
よくあるミス
輸出・サービス輸出でも、契約書や送金証憑が不足して0%否認される。
- VAT制度の課税対象外
- 仕入VAT控除:原則できない
- VAT還付:原則対象外
- インボイス表示:VAT-Exempt sale
よくあるミス
免税なのに表示が曖昧で、監査時に分類ミスを疑われる。
最重要:「0%」は課税取引なので、要件を満たせば仕入VATの控除・還付が可能。
一方で「免税」は原則として仕入VATがコスト化します。
Excess Input VAT(超過Input VAT)とは、ある期間においてInput VAT(仕入VAT)がOutput VAT(売上VAT)を上回って余った状態を指します。
超過Input VATは、取引構造によっては自然に発生します。大切なのは「なぜ余ったか」を説明できる形で管理し、繰越(carry-over)や、0%取引がある場合は還付の検討につなげることです(繰越=翌期以降に控除枠として持ち越す考え方)。
超過Input VATが出やすい3パターン
パターンA|輸出・0%中心
売上VATが0%になりやすく、仕入VATが残りやすい。
→ 還付・繰越の検討が重要
パターンB|設備投資・初期費用
立上げ期の投資でInput VATが先に大きく出る。
→ 期間管理と証憑整理が重要
パターンC|売上の季節変動
仕入が先行し、売上計上が後から来る。
→ 月次の整合と繰越管理が重要
注意:免税売上が混在する場合、共通経費のInput VATは按分(アロケーション)が必要になり、控除できる額が減ることがあります(按分=共通費用を比率で割り当てる計算)。
超過Input VATが積み上がるこれらの場合においては、「還付を狙うのか」「繰越で吸収するのか」を早めに設計することが重要なポイントとなります。
VAT登録の基準(3M PHP)
VAT登録とは、BIR(フィリピン内国歳入局)にVAT事業者として登録することです。
フィリピンでは、年間課税売上が3,000,000 PHP超になると、原則としてVAT登録が必要です (直近12か月ベースや見込み判定を含む)。
自社はVAT登録が必要?判定フロー
フィリピンVAT登録は、過去12か月の課税売上と今後12か月の見込みの両方で確認します。
Q1. 過去12か月の課税売上は 3,000,000 PHP を超えていますか?
※「課税売上」なので、免税売上は区別して集計します。
YES
原則、VAT登録を検討(必要)
- BIR登録の要否を確認
- インボイス運用を準備
- 申告フロー(2550Q)を整備
NO
Q2へ進む
現時点で強制登録ではない可能性があります。次に、今後の売上見込みを確認します。
↓
Q2. 今後12か月で 3,000,000 PHP を超える見込みがありますか?
※大型案件の受注予定や継続契約の増額見込みも含めて判断します。
YES
早めにVAT登録準備
- 売上超過前の運用整備が安全
- 契約・請求書表示を先に統一
- 輸出取引は証憑設計も同時に
NO
非VAT継続 or 任意登録を検討
- 非VAT(業種税)の可能性
- 輸出中心なら任意登録も選択肢
- 取引先のVAT請求要件を確認
迷ったらこの3点だけ確認
① 直近12か月売上(PHP)|② 売上内訳(国内 / 輸出 / 免税)|③ 主な取引先の属性(VAT登録事業者か)
補足(業種税)
VAT非登録者は、VATの代わりにPercentage Tax(業種税)が課されることがあります(一般的に3%)。
※Percentage Tax=VATの代替的な売上課税
VAT申告はどう行うのか?
VAT申告フォーム:BIR Form 2550Q
フィリピンのVATは原則として四半期申告です。基本フォームは次のとおりです。
- フォーム:BIR Form No. 2550Q(Quarterly Value-Added Tax Return)
- 期限:四半期終了後25日以内 (eFPSの案内:BIR eFPS 2550Q Help)
カレンダー年(1–12月)の典型スケジュールは次のイメージです。
| 対象四半期 | 期間 | 2550Qの提出・納付期限(原則) |
|---|
| 1Q | 1月〜3月 | 4月25日まで |
| 2Q | 4月〜6月 | 7月25日まで |
| 3Q | 7月〜9月 | 10月25日まで |
| 4Q | 10月〜12月 | 翌年1月25日まで |
※期日が休日の場合など、年によって実務上の扱いが絡むことがあります。該当年のBIR発表やeFPS表示に従う運用が安全です。
月次申告(2550M)は「任意」
2023年以降、月次のVAT申告(2550M)は「必須」ではなくなりましたが、BIRは要望を受けて月次で申告・納税する選択肢も認めています。
- フォーム:BIR Form No. 2550M(Monthly VAT Declaration)
- 根拠:RMC No. 52-2023 (PDF:BIR RMC 52-2023)
- 重要:月次を使っても、四半期の2550Qは期限内提出が必要(四半期終了後25日) (2550Q Help:eFPS 2550Q)
実務では「どちらの期限で動くべき?」が混乱ポイントになります。迷わないために、次のように整理すると安全です。
実務のおすすめ運用(結論)
- 最低限守るべき「必達」:2550Qを四半期終了後25日以内に提出・納付 (eFPS 2550Q Help)
- 資金繰り・管理を整えたい:2550Mを任意で併用(ただし最終的に2550Qで四半期を確定・整合)
結局、社内ではどう回すか?
四半期で必ず提出する前提で、社内は月次で準備→四半期で確定が最も事故が少ないです。
| タイミング | 必要作業 | 目的 |
|---|
| 月次(推奨) | 取引区分(12% / 0% / 免税)判定、インボイス回収、入金証憑整備、Input VAT集計 | 四半期締切前の「証憑不足」「分類ミス」を防ぐ |
| 四半期(必須) | 2550Q作成、Output/ Input確定、超過Input VATの繰越・方針整理、納付 | 期限内に正しく申告・納付し、後日の説明に備える |
実務で一番事故るパターンは「四半期最終月にまとめて処理」→「0%証憑やインボイス不足が発覚」→「期限直前で修正が間に合わない」です。月次で証憑まで含めて揃えることが安全でしょう。
申告に併せて必要な書類:SLSP
FAQ
Q1. フィリピンVATの税率はいくらか?
原則12%です。輸出等の一定取引は0%、免税取引はVAT対象外です。
Q2. フィリピンVATの登録基準はいくらか?
年間課税売上3,000,000 PHP超が目安です。直近12か月ベースや今後の見込みでも判定されます。
Q3. 0%と免税の違いは何か?
0%は課税取引(税率0)、免税は課税対象外です。 大きな違いは、仕入VATの控除・還付可否です。
Q4. 輸出なら必ず0%になるか?
必ずではありません。VAT登録、外貨受領、送金証憑、インボイス表示などの要件を満たす必要があります。
Q5. フィリピンVATは毎月申告か?
現在の実務では、四半期申告(2550Q)が基本です。
Q6. 非居住者のデジタルサービスにもVATがかかるか?
はい。近年の法改正で、フィリピンで消費されるデジタルサービスへのVAT課税が明確化され、 条件により非居住デジタル事業者や購入者側のリバースチャージが関係します。
※リバースチャージ=サービス受領者側がVATを申告・納付する仕組み
まとめ
フィリピンVATは税率(12%)自体はシンプルですが、実務では「課税対象かどうかの判断」→「税率区分(12%/0%/免税)」→「登録要否(3M PHP)」→「申告・証憑管理」の順で整理することが重要です。
0%適用の立証(契約・請求書・入金証憑の整合)
免税売上が混在する場合のInput VAT按分
超過Input VATの繰越や還付の方針整理
四半期申告(2550Q)を前提とした社内運用
といった論点は、キャッシュや税務リスクに直結します。
税率だけを見れば単純に見えますが、区分の誤りや形式要件の不備は否認リスクにつながるため、取引構造と申告体制を一体で見直すことが安全です。
税務申告でお困りの方へ
自社がVAT登録対象か判断がつかない
0%適用の証憑設計に不安がある
超過Input VATの扱いを整理したい
四半期申告(2550Q)の運用を見直したい
このような場合は、状況を整理するだけでも方向性が明確になります。
フィリピンVATの申告や運用でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。個別事情に応じて、取引構造と申告実務の両面から整理いたします。
お問い合わせは

参考文献
フィリピン内国歳入法(National Internal Revenue Code of 1997, as amended)
共和国法第10963号(TRAIN Law)
共和国法第12023号(デジタルサービスへのVAT課税)
BIR Form No. 2550Q(Quarterly Value-Added Tax Return)
BIR Revenue Memorandum Circular No. 52-2023