フィリピンにおける外資規制の全体像|進出前に押さえるべき基本ポイント

フィリピンへの進出を検討する際、多くの外資企業が早い段階で直面するのが「外資規制」です。

「この事業は外資でできるのか」
「出資比率は何%まで認められるのか」
「最低資本金額はいくらなのか」

こうした疑問に対し、フィリピンの外資規制は単一の法律や一覧表だけでは判断できない仕組みになっています。

本記事では、フィリピンの外資規制を個別のルールの集合ではなく、全体の構造として整理し、進出検討の過程でどの順番で何を確認すべきかを解説します。

条文や細かな例外条件を網羅するのではなく、
「自社の事業が外資規制の論点に触れやすいか」、「次に確認すべきポイントはどこか」を把握できることを重視しています。

外資規制は「できる/できない」ではなく「設計で決まる」

まず重要なのは、フィリピンの外資規制は 全面的な業種規制型ではない という点です。

基本的な考え方は次のとおり整理されます。

  • 原則として、外資100%での投資が認められている

  • ただし、憲法や法律で制限された分野では外資比率に上限が設けられる

そのため、同じように見える事業であっても、

  • 事業内容の定義

  • 必要となる許認可

  • 出資比率や経営関与の設計

によって、外資規制の結論が変わることがあります。

この前提を理解せずに「FINLに載っている/載っていない」といった表面的な情報だけを見ると、判断を誤りやすくなります。

フィリピン外資規制は「4つの役割」で理解する

フィリピンの外資規制は、複数の法令・制度が役割分担することで成り立っています。

重要なのは、それぞれが何を決める制度なのかを理解することです。

① 憲法:外資規制の大枠を定める

フィリピン憲法(The 1987 Constitution of the Republic of the Philippines)は、
外資規制の最上位に位置づけられます。

ここでは、国の主権や公共性が強く関係する分野について、基本的な枠組みが定められています。

外国資本の関与を制限する、代表的なものは以下です。

  • 土地の所有

  • 天然資源の探査・開発・利用

  • マスメディア(新聞・放送など)

  • 広告

  • 教育機関

憲法は、「この事業は外資〇%まで」といった具体的な出資比率を直接定めるものではありません。
一方で、どの分野について外資規制を設けることが認められるのかという基本的な枠組みを示し、後続の法律や規制がその範囲内で具体的な制限を設ける根拠となっています。

② 外国投資法:原則自由という考え方を示す

外国投資法(Foreign Investments Act:RA 7042(1991年制定)、RA 11647により2022年に改正)は、フィリピンにおける外資規制の基本思想を定めています。

この外国投資法は、「原則として外資投資を認め、例外的に制限する」という基本構造を採用しています。
同法第7条では、次のように規定されています。

“Non-Philippine nationals may own up to one hundred percent (100%) of domestic market enterprises unless foreign ownership therein is prohibited or limited by the Constitution, existing law or the Foreign Investment Negative List…”
(Republic Act No. 7042, Foreign Investments Act, Sec. 7)

つまりフィリピンでは、「原則自由、例外的に制限」という立て付けが採られています。

この点は、業種ごとに一律の規制が並ぶ国と比べると、進出設計の自由度が高い一方で、例外となる分野を見落とさないことが重要になります。

③ FINL:外資規制が論点になり得る分野を示す

FINL(Foreign Investment Negative List)は、外国投資法に基づき、大統領令として公表されるリストです。現行は 第12次FINL(EO 175, 2022年) が前提となります。

FINLには、憲法や法律により外資の参入が制限されている、または制限され得る分野
が整理されています。

ただし、FINLは外資可否を最終判断するための規定ではありません

FINLの役割は、「この分野は要注意で、次に個別法や許認可を確認すべき」
と示す入口(索引)である点にあります。

  • FINLに載っていない分野 → 原則として外資100%可能
    (ただし、事業の定義や個別業法・許認可による確認は別途必要)

  • FINLに載っている分野 → 憲法・個別法に基づく制限が想定されるため、詳細な確認が必要

という整理が基本となります。

④ 個別業法・許認可:実務上の結論を決める

最終的に、外資規制の結論を決めるのは、各業種に対応する個別業法と、関係機関による許認可の運用です。

ここでいう許認可とは、各事業分野を所管する関係機関が、ライセンス(免許・許可)、登録、事業実施権などの形で、当該事業の実施可否を判断する仕組みを指します。

具体的には、

  • 当該事業が法律上どの業種に該当するのか

  • 許認可が必要か、必要であれば所管官庁はどこか

  • 外資比率や外国人役員に関する条件が課されるか

といった点が判断されます。

同じビジネスモデルでも、「公共事業に該当するか」「単なるサービス提供か」といった整理次第で、外資規制の扱いが変わることもあります。

実務上は、FINLは入口、個別業法・許認可が最終判断という位置づけになります。

初期検討で当たりやすい分野(代表例)

進出検討の初期段階で、特に論点になりやすい分野は以下です。

分野外資規制の概要(一般論)
小売業近年の法改正により100%外資も可能。
ただし最低資本金などの要件あり
不動産(土地)外国人・外資企業による土地所有は原則不可
コンドミニアムプロジェクト全体で外国人所有は40%まで
公共サービス・インフラ分野により100%外資可と40%制限が混在
マスメディア原則として外資不可
広告外資30%まで(70%以上フィリピン人所有が必要)

よくある誤解

  • 60-40とは「外国人60%まで」ではない
    → フィリピン人が60%以上必要という意味

  • FINLだけ見れば足りるわけではない
    → 個別業法・許認可で結論が変わる

  • 名義を借りれば回避できるわけではない
    → アンチダミー法により違法となる可能性あり

まとめ|外資規制は「進出可否」より「進出設計」

フィリピンの外資規制は、一見すると複雑ですが、構造自体は整理可能です。

  • 憲法で大枠を確認し

  • 外国投資法の原則を押さえ

  • FINLで注意分野を把握し

  • 個別業法・許認可で最終判断を行う

この順番で考えることで、過度に慎重になりすぎることも、逆にリスクを見落とすことも防ぎやすくなります。

進出検討においては、外資規制は「壁」ではなく、「設計の前提条件」と捉えることが重要です。

自社の事業がどの規制に該当するのか、どの段階で専門家確認が必要かは、
初期検討段階では判断が難しいケースも少なくありません。

個別の事業内容を前提にした整理が必要な場合は、
ぜひ私たちにお気軽にご相談ください。

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