執筆:ES CONSULTING VIETNAM CO., LTD. 縄重 宏史

前回F&Bの記事「【2026年最新】ベトナム飲食店進出は儲かる?データで読み解く『儲からない店』が生まれる理由と成功の鍵」では、ベトナムF&B市場全体の成長と、個別店舗の売上・利益は別の問題であることを解説しました。

では、実際にベトナムで飲食店を出店する際、店舗の売上はどのように予測すればよいのでしょうか。本記事では、立地選定から個別店舗の売上予測までを現地調査の視点を交えて解説します。

1. 立地選定:高い賃料を払う好立地出店は競争優位につながるか

ホーチミン市では、これまで飲食の目的地ではなかった地域に、新たな飲食・娯楽の集積地が形成されつつあります。

2026年上半期レポートによると(※)、旧Gò Vấp中心部、旧Tân Phú中心部、Thủ Đức、Ung Văn Khiêm通り・Nguyễn Gia Trí通り周辺などでは、数百平方メートル規模の店舗、十分な駐車スペース、一定の店舗密度、許容できる賃料水準を背景に、「フードストリート」と呼べるような集積が進んでいます。

消費者は数キロ離れていても、広く快適で、価格と品質のバランスが良い店舗を選ぶ傾向があり、旧1区など中心部の高額物件にとっては直接的な競争相手となっています。

こうした変化は、「良い立地=中心部」という従来の考え方を見直す必要があることを示しています。ベトナムではバイク移動が一般的であり、日本ほど駅前立地の優位性が絶対ではありません。そのため、賃料の高い中心部よりも、十分な駐車スペースを確保できる準中心部の方が、収益性の観点では有利になる可能性もあります。

2. 客単価をいくらに想定すべきか

飲食店の売上は、以下の計算式で整理することができます。

1日売上 = 客単価 × 客席数 × 客席稼働率 × 回転数

2026年上半期レポートの消費者調査(ハノイ・ホーチミン市を中心とした934名)によると、「特別ではない通常の会食」で妥当と考える1人当たり支出額は以下の通りです。

  • 100,000VND以下:10.2%
  • 101,000~150,000VND:26.3%
  • 151,000~200,000VND:29.6%
  • 201,000~300,000VND:20.0%
  • 300,000VND超:13.9%

101,000~200,000VNDが55.9%を占め、200,000VND以下で見ると66.1%に達しています。

この結果から、200,000VND前後がベトナム人消費者にとっての一つの心理的な上限と考えられます。日系飲食店が350,000VND以上の客単価を設定する場合、「日本食だから高い」ではなく、「なぜその金額を支払う価値があるのか」を明確に示す必要があります。


3. 客席数×客席稼働率:「席が埋まる」=「売上が上がる」とは限らない

次に考えるべきなのが客席稼働率です。

100席の店舗であっても、常に100席が埋まるわけではありません。そのため売上計画では、客席数だけでなく、実際に何%の席が利用されるのかを予測する必要があります。

なぜならば「席が埋まっていること」と「売上が生まれていること」は必ずしも同じではないためです。

ベトナムでは、店外で購入した食べ物や飲み物、手作り弁当を店内に持ち込んだりする光景があり、日系飲食店も例外ではありません。

日本の飲食店経営者の感覚では違和感を覚えるかもしれませんが、ベトナムでは店舗ごとに「持ち込み禁止」「追加料金を徴収」「事実上黙認」など対応が分かれています。そのため、仮に客席が高い割合で埋まっていたとしても、想定した客単価が実現しているとは限りません。

特に競合店調査を行う際には、「何席埋まっているか」だけでなく「1卓当たりどの程度注文しているか」まで観察することで、より現実的な売上予測につながります。


4. 回転数

回転数を高めるためには、料理提供のスピードを上げることに加え、必要以上に長居しない利用形態を促すことも重要です。

2026年上半期レポートでは、ホーチミン市で急成長しているTiệm Lẩu Bò Trăm Rưỡi(牛肉鍋店)、Khapi(タイ料理店)、Ngõ Thái(タイ料理店)などについて、メニューを絞り込み、提供時間を短縮することで、1組当たりの滞在時間を30分~1時間程度に設計していると分析しています。また、多くの店舗が22時頃に閉店する中、深夜0時30分頃まで営業することで、同じ席数からより多くの売上を生み出しているとされています。

分析結果を検証するため、実際に店舗を訪問しました。

現地訪問での考察

Tiệm Lẩu Bò Trăm Rưỡi(牛肉鍋店):
角地に立地し、隣接する閉鎖店舗を来店客向けのバイク駐車場として活用していました。訪問時には3店舗の中で最も賑わっており、客入りの良さが目立ちました。客単価は1人100,000VND以下と手頃で、料理の提供も非常に迅速でした。また、アルコール類は提供せずソフトドリンク中心としており、短時間利用を前提とした業態設計がうかがえました。店員数も多く、接客対応はスムーズでした。

Khapi(タイ料理店):
同店の近隣に位置し、店舗前にはバイク駐車スペースが確保されていました。こちらも店員数が多かったですが、訪問時には若干の空席が見られました。ビールは提供しているものの、日本の居酒屋のように長時間滞在する雰囲気ではなく、比較的短時間で食事を終える利用形態が中心と考えられます。

Ngõ Thái(タイ料理店):
裏路地に立地しており、訪問時には利用客がおらず、約30分滞在した間にも新たな来店客は見られませんでした。

もちろん一度の訪問のみで結論を出すことはできません。しかし今回訪問した店舗を比較すると、料理の味だけではなく、「アクセスしやすい立地」「バイクを停めやすい環境」「短時間で食事を終えられるオペレーション」が集客や回転率に大きく影響しているように感じました。

特に繁盛していたTiệm Lẩu Bò Trăm Rưỡiでは、客単価を抑える代わりに回転数を高めるという考え方が徹底されていたように見受けられました。実際に、3名で食事をしても1人当たりの支払額は100,000VND未満と非常に手頃な価格帯であり、料理の提供スピードも速かったことから、高回転を前提としたオペレーションが構築されているものと考えられます。


5. デリバリー売上

GrabFoodやShopeeFoodなどのFood-appは、ベトナムでも重要な販売チャネルです。

一方、2026年上半期レポートで「前年同期比で最も成長した販売チャネル」を事業者に尋ねたところ、以下の結果となりました。

  • 店内飲食:43.02%
  • Food-app:18.52%
  • 店頭テイクアウト:16.24%

つまり、Food-appは重要な補完チャネルである一方、飲食店の成長を支える中心は依然として来店客であり、「何人のお客様に来てもらえるか」が最も重要であることに変わりありません。


6. まとめ

店内飲食の売上は、以下の構成要素で成り立っています。

客単価 × 客席数 × 客席稼働率 × 回転数

このうち客席数は物件によって決まる固定要素ですが、客単価・客席稼働率・回転数は相互に影響します。客単価を日本の感覚だけで設定すると、それに対応する来店客数や回転数の前提が崩れ、売上計画全体が実態から乖離する可能性があります。

また、総売上は店内飲食だけではなく、テイクアウトやFood-appによる売上も加えたものです。

重要なのは、机上の計算だけでなく現地で検証することです。候補エリアの競合店を訪問し、平日・週末の朝昼晩の客入りを確認し、必要に応じて周辺店舗から情報収集を行うことで、計画と実態のズレに早い段階で気付くことができます。

もちろん、事前調査だけですべてのリスクを排除できるわけではありません。それでも、契約や内装工事といった後戻りしにくい投資を行う前に仮説を検証することは、出店判断の精度を高める上で非常に重要です。

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データ出典:
※ iPOS.vn & Nestlé Professional「THỊ TRƯỜNG KINH DOANH ẨM THỰC TẠI VIỆT NAM 6 THÁNG ĐẦU NĂM 2026」



本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する専門的な助言を意図したものではありません。本記事の内容に基づいて行われた対応の結果について、当社は責任を負いかねます。実際の手続や意思決定を行う際は、必ず最新の法令をご確認のうえで専門家へご相談ください。