フィリピン労務の基礎知識!労働法や給与計算、社会保険等の制度について

フィリピン進出を検討する際に、「現地の労働法は日本とどう違うのか」「給与計算や社会保険はどのように対応すればよいのか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
フィリピンでは、13ヶ月給与や厳格な解雇規制、複数の社会保険制度など、日本とは異なるルールや商習慣が数多く存在します。
制度を十分に理解しないまま労務管理を行うと、労使トラブルや法令違反につながる可能性もあるため注意しましょう。
この記事では、フィリピン労務の基礎知識として、労働法、給与計算、社会保険制度のポイントを分かりやすく解説します。
フィリピン労働法のポイント

フィリピンの労働法は、従業員保護の考え方が強く、給与支払いや労働時間、福利厚生などについて細かなルールが定められています。
特に、以下の項目は実務でトラブルが起きやすいため、事前に確認しておきましょう。
項目 | 概要 |
労働時間 | 原則1日8時間・週48時間以内 |
時間外労働手当 | 割増賃金の支払いが必要 |
休日・休暇 | 祝日区分(Regular/Special)により扱いが異なる |
賃金支払 | 原則月2回以上の支払い |
最低賃金 | 地域ごとに設定・改定される |
13ヶ月給与 | 年1回支給が義務付けられている |
試用期間 | 原則6ヶ月以内 |
例えば、フィリピンでは給与を毎月1回ではなく、原則として月2回以上に分けて支払う必要があります。
また、13ヶ月給与(13th Month Pay)の支給や、地域ごとに異なる最低賃金への対応など、継続的な管理が必要となる制度も少なくありません。
さらに、残業代や休日出勤手当には細かな割増率が定められており、計算ミスが労務トラブルにつながるケースもあります。
現地法人を運営する際は、労働法の基本ルールを理解したうえで、適切な労務管理体制を整えることが大切です。
フィリピンの労働法の詳しい内容については、「フィリピンの労働法概要(労働時間、休日、休暇など)」で解説しています。
フィリピン給与計算のポイント

フィリピンの給与計算は、日本と比べて控除項目や法定手当の種類が多く、制度改定も比較的頻繁に行われます。
そのため、「どの項目を控除すべきか分からない」「残業代の計算ルールが複雑」と悩むケースも少なくありません。
まずは、以下の基本的な仕組みを押さえておきましょう。
項目 | ポイント |
支給頻度 | 原則月2回以上の支払い |
支給項目 | 基本給に加え、残業代・深夜手当・休日手当の計算が必要 |
源泉税(Withholding Tax) | 課税所得の金額に応じて控除が必要 |
社会保険料(SSS・PhilHealth・Pag-IBIG) | 給与から控除し、会社負担分と合わせて納付が必要 |
前述の通り、フィリピンの給与支給は原則月2回以上のため、勤怠集計や残業時間の確認、給与明細作成などの業務も月2回以上発生します。
給与計算では、基本給だけでなく、残業代や深夜勤務手当、休日出勤手当なども適切に計算しなければなりません。
例えば、フィリピンでは法定休日(Regular Holiday)に勤務した場合、通常賃金より高い割増率が適用されます。
また、給与からは源泉税(Withholding Tax)のほか、社会保険制度であるSSS(年金)、PhilHealth(公的医療保険)、Pag-IBIG(住宅積立基金)を控除する処理が必要です。
最低賃金や社会保険料率は改定されることがあるため、最新情報を継続的に確認しながら運用しましょう。
フィリピンの給与計算については、「フィリピンの給与計算の基本と実務上の注意点」で詳しく解説しています。
フィリピン社会保険のポイント

フィリピンでは、従業員を雇用する際、複数の社会保険制度への加入が義務付けられています。
それぞれの制度内容や保険料計算、加入手続きの流れを理解しておきましょう。
代表的な制度は、以下の3つです。
【主な社会保険制度】
制度名 | 概要 |
SSS(Social Security System) | 年金・傷病・失業などをカバーする制度 |
PhilHealth | 医療保険制度 |
Pag-IBIG Fund | 住宅支援・積立制度 |
「SSS(Social Security System)」は、日本の厚生年金保険や雇用保険に近い役割を持つ制度で、老齢年金、出産、傷病、障害、失業などに関する給付を行います。
「PhilHealth」は公的医療保険制度であり、入院や医療サービス利用時の費用負担軽減を目的としています。
また、フィリピン特有の制度として知られているのが「Pag-IBIG Fund」です。
これは、住宅取得支援や積立を目的とした制度で、加入者は住宅ローンの利用や積立金の引き出しなどが可能になります。
これらの社会保険料は、会社と従業員の双方が負担する仕組みです。
毎月の給与計算時に従業員負担分を控除し、会社負担分を加算したうえで、各機関へ期限内に納付する必要があります。
社会保険料の詳細な計算方法や納付手続きの手順については、「社会保険料の計算・納付」で詳しく解説しています。
フィリピン解雇規制のポイント

フィリピンの労働法は、東南アジアの中でも労働者保護の色合いが強いことで知られており、解雇規制についても厳格なルールが定められています。
従業員を解雇するためには、法律上認められた「正当な理由(Just Cause / Authorized Cause)」が必要です。
代表的なJust Causeには、以下のようなものがあります。
- 重大な服務規律違反
- 会社への背信行為
- 故意による損害行為
- 重大な職務怠慢
- 犯罪行為 など
Authorized Causeとしては、事業縮小や人員整理、業績悪化によるリストラ、病気による長期就業不能などが該当します。
また、正当な理由があっても、書面通知などの適正な手続きを踏まなかった場合には、企業側が法的責任を負う可能性があります。
1回目の書面通知で問題行為や解雇理由を通知し、その後に従業員へ弁明機会を与え、最終判断後に2回目の通知を行う「Two-Notice Rule」のが一般的です。
不当解雇と判断された場合には、未払賃金の支払い、損害賠償、復職命令などを命じられるケースもあるため、現地の弁護士や労務専門家と連携しながら、慎重に進めることが重要です。
正当な解雇理由の詳細や具体的な手続きの流れについては、「解雇規制と手続き」の記事で詳しく解説しています。
フィリピン労務でよくある疑問

続いては、日系企業の労務担当者が抱きやすい、フィリピン労務に関するよくある疑問にお答えします。
試用期間中は自由に解雇できる?
試用期間中の従業員を解雇するためには、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 雇用開始時に示した合理的な本採用基準を満たさなかった場合
- 正当な理由がある場合
試用期間中であっても、書面通知や説明機会の付与など、適正な手続きが求められるため、慎重な対応が必要です。
就業規則は必要?
フィリピンの労働法では、日本のように就業規則作成を一律に義務付けているわけではありません。
しかし、実務上は就業規則や社内ポリシーを整備しておくことが重要です。
特に、懲戒処分や解雇を行う際には、「どのような行為が規律違反に当たるのか」を事前に明確化しておく必要があります。
勤務時間、服務規律、休暇ルール、ハラスメント防止、情報管理などを文書化し、従業員へ周知しておきましょう。
13ヶ月給与はいつ支払う?
13ヶ月給与は、原則として毎年12月24日までに支払わなければなりません。
支給額は、その年に支払った基本給合計額の12分の1以上が原則です。
支払いが遅れた場合や未払いが発覚した場合には、労働基準違反として行政指導やペナルティの対象となる可能性があります。
残業を拒否された場合はどうする?
従業員に残業を拒否された場合、一方的に残業を強制することは非常に困難です。
フィリピンの労働法は労働者保護の考え方が強く、残業についても、原則として従業員本人の同意が前提とされています。
また、法定労働時間は原則1日8時間であり、これを超える労働には通常賃金の25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
慢性的に残業が発生する業務については、採用時点で勤務形態や残業の可能性を説明し、就業規則や雇用契約書にも明記しておくことが重要です。
社会保険の未加入リスクは?
社会保険への未加入や保険料の未納、納付遅延が発覚した場合、罰金や延滞金などのペナルティが課される可能性があります。
社会保険の登録漏れがあると、従業員が医療給付や年金給付を受けられなくなる可能性があり、「会社が適切に対応してくれない」という不信感から、労務トラブルや離職の原因になるケースも少なくありません。
そのため、採用時に必要書類を確実に回収し、加入申請から毎月の納付管理まで、一連の業務フローを整備しておくことが重要です。
フィリピン労務管理は現地の専門家に相談しよう

フィリピン進出時には、会社設立や営業許可だけでなく、労務管理体制についても準備を進めておくことが大切です。
初めてフィリピンへ進出する場合、現地の法律や実務に精通した専門家へ相談しながら進めると、リスクを抑えながらスムーズな事業運営につながります。
エスネットワークスフィリピンでは、法人設立やライセンス取得の支援に加え、労務・人事管理、会計・税務に至るまで、幅広い分野でのサポートを提供しております。
フィリピンへの事業進出の際には、お気軽にご相談ください。
